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生活者視点から始まったものづくり
――デザイナーのお二人が今回のプロジェクトに合流されたときの状況や、オリエンテーションの時の印象はいかがでしたか?
下側:私は花王の「作成センター」で、生理用品や大人用おむつなどのサニタリー領域のデザインと、新規事業のUI・UXデザインを担当しています。
今回のお話をいただいた時は、これまでの花王にはあまりなかったタイプのプロジェクトだなという印象でした。
というのも、花王の商品は店頭で販売するものが中心ですが、今回はアプリを入り口としてECで購入いただく新しい形の事業だったからです。
そのため、パッケージ単体ではなく、アプリとのつながりや、オンライン上でどう見えるかまで含めて考える必要がありました。
――店頭での見せ方ではなく、アプリやECも含めて考えなければいけなかったわけですね。実際にプロジェクトへ参加されたときは、デザインの方向性も含めてまだ模索している段階だったのでしょうか。
下側:そうですね。
インソールはすでに機能の検討が進んでいたのですが、パッケージは箱のサイズだけが決まった真っ白な箱があるだけで、デザインの方向性は何も決まっていませんでした。
一方、アプリも一度テスト用に開発した初期のモックアップの状態で、これからどう育てていくかを考える段階で、開発側の皆さんも、「これを作りたい」という完成形を持っているというより、「こんな技術があって、こんなことを実現したいと考えていますが、どう思いますか?」という感じで、いろいろな材料を持ち寄りながらみんなで考えていくようなスタートだったんです。
――パッケージデザイナーの立場からすると、かなり難易度が高そうにも感じます。
下側:そうかもしれません(笑)。
長く続いているブランドの商品は、守るべき資産やルールもあります。一方で今回は、ブランドの見せ方も含めて自由に提案できる余地が大きかった。
だから難しさもありましたが、それ以上にワクワクしていましたね。
惠口:新しいブランドとして世の中に出していく以上、尖っていないと目立たないし、覚えてもらえない。新規事業だったこともあって、最初はあえて「花王らしくない」方向のデザインに思い切って挑戦しようとしていました。
下側:そうでしたね。
アプリの画面を見せていただいた時も、すごく先進的で尖ったデザインではあったのですが、どこか無機質な印象もあって……。
でも実際に測定してみると、自分の状態がスコアとして表示されて、その瞬間、周りにいたデザイナーから「おおっ!」という声が上がったんです。「自分の身体の状態が分かるって、こんなに面白いんだ」と感じましたし、この体験をどう生活者の皆さんに届けるかが大切だと思いました。
黄:私は当時、まだ入社1年にも満たない頃でした。それまで日用品のデザインを担当していたので、正直インソールはほとんど気に留めたことがありませんでした。
もちろん存在は知っていましたが、自分とはあまり縁のないものだと思っていたんです。
高橋:世間一般の方にとっても、そんな程度だと思うんです。実は私自身も、このプロジェクトに関わる前はそうでした。だからオリエンテーションの時は、展示会で初めてインソールを体験した時の感動や、「これは多くの人に届けたい」と思った理由を、必死に伝えていた記憶があります。
ヒールカップやアーチといったそれぞれの構造には意味があるし、この形にも理由がある。その価値をどう伝えればいいのか、一生懸命話していましたね。
黄:高橋さんのお話や研究データを見せていただくうちに、どんどん興味が湧いてきたんです。
「この形状にはちゃんと理由があるんだ」と分かってきて、気づけば自分でもインソールを調べたり、欲しくなったりしていました(笑)。
ベースとなる機能は研究や開発で形になっていましたので、私はそれをどうすれば花王らしい佇まいにできるか、どうすれば生活者の方が手に取りたくなるかを考えながらデザインしていました。
――お話を伺っていると、皆さんが向き合っていたのは単にアプリやインソールを作ることではなく、生活者の視点で、プロダクトと向き合っていたんですね。
下側:その良さをどうすれば生活者の皆さんに伝えられるのか。生活者視点に立ったとき、どんな見せ方がベストなのかということは、ずっと考えていました。